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音楽を愛して萌えと共に生きる
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老人は何を思うのか
かれこれ二時間は経っただろう
ただ川辺にしゃがみこみ延々と小石を積んでいく
幾つも積み上げられていく小石
老人はただ拾いは積み拾いは積みを繰り返した
老人の辺りには幾つもの山が出来ている
川辺の白い小石で積み上げた山はまるで地面から飛び出た棘のようだ
そのすぐ側に袖の膨らんだワンピースをきた少女が立っている
少女は夏の暑さなど感じさせぬかのように老人が小石を積みあげていく機械的な作業を見つめ続けていた
老人の顎を伝い汗が地面に黒い染みを作った
風が少女の着ている白いワンピースを揺らす
強い風が老人の積んだ塔を揺らした
がらがらと一瞬にして崩れ落ちる塔を老人は焦る事もなく見つめていた
散らばった小石を集めると崩れた場所にまた積み上げ始めた

「馬鹿なのね」

其の時少女が口を開いた
老人は聞こえないのか黙っているのかは分からないが
まるで其処に少女はいないかのように振る舞った
少女の存在は老人にとってどうでもいいようだ
ただ地面を凝視し黙々と機械の様に作業を進めていく
少女もまた老人を見下ろしながら黙っていた
そして白い脚を白い塔に降り下ろした
辺りの塔も小石を遠くに飛ばす様に蹴りあげた
飛んだ小石が幾つか老人の背を打った

「何時までそうしているつもりなの」

少女の声は震えて辺りに鳴く蝉の声に混じった
老人は顔を上げて少女を視界にいれた
少女は老人が何か喋るのかと期待したが
少女の意に反して老人はまた作業を進めた
川辺に座り込んで小石を積み上げていく老人
老人は掠れた声を出して言った

「死ぬまで」


少女は呆れた様に溜め息を溢すと自分も老人の横にしゃがみこみ白い塔を作り始めるのだった




(川辺に白い塔を)
(高く高く)
(そうすれば救われるのだから)
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